スワデンタルCAD/CAMセンターでこの直近一カ月の簡単な統計を取ってみました。対象はCAD/CAM冠の製作数です。すると小臼歯、大臼歯、前歯、インレーの全ての種類のCAD/CAM冠を合わせて3000本/月を越えることが分かりました。
昨年の同時期では1800本/月程度だったので約1.6倍となり、やはり4月のCAD/CAMインレー保険導入のインパクトが非常に大きいということが分かります。
CAD/CAMセンターの9月危機
スワデンタルCAD/CAMセンターは9月頃には非常なピンチを迎えていました。
CAD/CAM冠の受注の増加と加工機の不調が重なり、生産能力に全く余剰がない状態でした。これに加えてスワデンタルは最も有力な技工士を失いました。
西方光君は2014年のCAD/CAM冠保険導入から一貫してCAD/CAM冠の製作に取り組んできたCAD/CAM最古参の一人で、現在のスワデンタルのCAD/CAM冠の製作ルーティンを確立しました。非常に確実かつ美しい仕上げの技工士で、一時期は同期の湯川君とたった2人でスワデンタルのCAD/CAM冠を支えていたことがあるなど、名実ともにスワデンタルの主力でした。その西方君が家業を継ぐために9月を最後に帰郷したのです。
このような状態から現状維持どころか増産するなど、もはや奇跡としか言いようがありませんが、その実現は1にも2にもCAD/CAM冠担当の歯科技工士たちの頑張りのおかげです。
具体的には新導入と新設定の加工機の稼働が軌道に乗ったことと、産休組の復職と、昨年から今年にかけてCAD/CAM冠製作をはじめた新加入組がここにきて順調に育ってきたからです。
CAD/CAM冠歯科技工士の奮戦
まず現主力達の山田君、岩田さん、廣瀬さん、3人は最も多くの仕事をこなしながら新型機の稼働を軌道に乗せるという非常に困難な仕事を成し遂げてくれました。そして前装冠の経験が長く前歯CAD/CAM冠のベテラン湯川君。
だた製作数で言えば深澤君が群を抜いています。彼は深夜から早朝にかけてのフレックス勤務なので、私はほとんど顔を合わせる事がありません。なのでこの場を借りてお礼します。いつもどうもありがとう。
奥津さんと外島さんの二人は産休からの復帰です。奥津さんは主力に次ぐ製作数ながら300 本に1本しか出さない驚異の再製率の低さを誇っており、お子さんのために決まった時間にきっちり帰る働き方と、今後の女性歯科技工士の働き方のモデルとなりそうです。そして成長著しい今崎さん、鈴木さん、倉地君、劉さん、黄さんの若手組の面々。
このように現在は合わせて12名、加工機が10台で過去最多、そして恐らく最強の布陣となっています。
いつごろになるのか口腔内スキャナーの保険導入
さて、このように持ち直したとしても、少しも安心できないのがCAD/CAMという分野の恐ろしいところです。
CAD/CAM冠は国民健康保険を用いた治療に使われるので、政府の保険行政の変化に非常に大きな影響を受けます。その良い例が4月のCAD/CAMインレーの導入です。
また何らかの新しい機器が保険導入されて、4月ショックと同じようなことが、すぐに起こらないとも限りません。
そして近い将来、その保険導入は避けようがない、と見られているのが「口腔内スキャナー」です。
現在私が担当している歯科医院はすべて口腔内スキャナーを導入していただいているので、私に限ってはこの2年間ほど石膏模型に触っていません。
それから判断してこれは全くの私見ですが、印象材による印象と、口腔内スキャナーによる印象の優劣は、どちらにも良い所がある、といった互角のレベルにはなく、コンポジットレジンとジルコニア、そしてインプラント上部構造体の製作に対しては圧倒的に口腔内スキャナーが優位です。(ただしどのような機種でも歯科技工所と歯科医院ぐるみで取り組んで、しっかりと使いこなす域までもっていく必要があります。)
つまり口腔内スキャナーが保険に導入されれば、すべてがCAD/CAM冠になります。その際のインパクトは受注が1.6倍となったCAD/CAMインレーどころではありません。
現行が3000本/月だとすると、仮にCAD/CAMインレーと同程度のインパクトとしても最低5000~6000本/月は覚悟しなければなりません。
ではどれほどの人員と設備があれば、この近い将来に予想されているインパクトを吸収できるのでしょうか。
CAD/CAM冠の統計を取っていると、ある傾向が見えてきます。それは主力のベテラン勢がだいたい400本/月程度であるのに対して、訓練中の若手は100本/月程度になることです。
これは設備の運用法やどのような仕上げ手法を用いるか、ということでこの数はかなり上下すると思いますが、現行のスワデンタルの設備・方法、そして求められている品質としては、1日20本前後が一人の仕事量として限度になるという事です。
さて大事なのはこの主力と若手の比率です。例えば主力15人だけでも6000本/月の仕事ができる計算になりますが、これでは作る以外に全く余裕がないので、新人の教育をしたり新しい機器を導入するための研究ができなくなります。
理想を言えば、主力と若手を同数とすることです。つまり主力が300本/月で15人で4500本/月、そして若手の100本/月が15人で1500本/月、合計6000本/月を目指せば、非常に柔軟性のある強力な組織となると思います。
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